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ルネサスの省エネ・低消費電力に向けた取り組み (4)


電源向け低消費電力化技術


臨界モードインターリーブのPFC ICや低損失MOSFETで
あらゆる機器の電源電力の高い変換効率を実現

電源は、交流電力または時間的変動のある直流電力を、一定電圧の直流電力に変換する役目を負う。変換効率を1%でも高めることが低消費電力化と省エネに直結する。ルネサスでは、臨界モードインターリーブ方式のPFC ICや高精度の電池残量検出を実現する電池制御ICをいち早く提供し、変換効率の向上に貢献してきた。またパワーMOSFETに関しても、SiP技術を使った6mm×6mmのDrMOSを提供するなど、小型化と電源効率向上を進めている。

電力効率向上と木目細かいバッテリ制御が極めて大きな意味をもつ

高性能化と多機能化に加え、最近では省エネ対応が強く望まれるエレクトロニクス機器にとって、電源が果たす役割は大きくなる一方である。コンセントやバッテリから得た電力を、機器の動作状況に応じて供給することはもちろんだが、今では変換時の効率の高さが最大の焦点となっている。変換効率が高まれば、それだけロスする電力が減り発電所やバッテリの電力消費を減らすことが可能になる。バッテリなら同じ電池容量でも駆動時間が延ばせるからだ。

最近では、Energy Star(国際エネルギースタープログラム)のような国際的な省エネの指針において極めて高い電力変換効率を求める動きもあり、PCや家電メーカを中心に対応が進んでいる。電源の変換効率はすでに80~90%以上に達しており、たとえ1%でも効率を高めることが大きな成果となる。

またバッテリ自体もインテリジェント化が進んでおり、電力の残容量を細かく正確に管理して機器に伝える機能や、充放電時の電流を監視して発火などの事故を未然に防止する保護回路の搭載などが不可欠となっている。

臨界モードインターリーブでPFCの出力を倍増

AC(交流)電源を入力とする電源は、ACをDC(直流)に変換する働きをもつ。入力に近い方から整流回路、PFC(Power FactorCorrection)回路、PWM(Pulse Wid thModulation)回路、変圧器(トランス)で構成される。これらのなかで最近注目されるのが、PFC回路である。

PFC回路は「力率改善回路」とも呼ばれ、外付けのインダクタに電流を流すことによって電流の波形を正弦波状に変え、電源の効率を高めるとともに高調波雑音を低減する。

PFC回路が無い場合、整流回路からPWM回路に流れる電流はパルス状となり、ピーク電流が非常に高くなるとともに高調波雑音が発生する。電力会社や電子機器メーカなどは、このピーク電流に合わせて設備や回路などを設計しなければ事故につながる。そのため、インフラ設備やエネルギー消費を増大させる要因ともなっていた。

そこでルネサスは、臨界モードインターリーブと呼ぶ方式をPFC ICに初めて採用した(図1)。臨界モードインターリーブは2系統のインダクタ回路が交互に動作する方式で、1系統のインダクタ回路がずっと動作する方式(臨界シングル方式)に比べると、2倍の電力が得られる。また出力電流の脈動(リップル)が小さいので、リップルを打ち消すコンデンサの容量を小さくでき、電源を薄型化しやすくなる(図2)。

例えば臨界モードインターリーブ方式のPFC IC「R2A20112」を採用した場合、従来のPFC ICを搭載した場合に比べ、電源の基板面積を33%減らすとともに、基板の高さを40%低くできる。

また負荷が軽いときでもPFCの効率を高める技術も開発中である。通常、負荷が40%以下の軽い領域では、PFCの効率が低下する。そこで1系統のインダクタを遮断するスレーブドロップ技術と、PFC内部の昇圧を弱めるロードトレーシングブースト技術を開発した。これによって効率を2~3%向上できることが確認されている。

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図1:臨界モードインターリーブ方式PFCの回路構成

図2:臨界シングルと臨界モードインターリーブでのインダクタを流れる電流波形の違い
大幅な低損失を実現したパワーMOSFET 業界最高の高効率を誇るDrMOSを提供

また、電源用ディスクリート部品としてパワーMOSFETがある。ルネサスはDC/DC電源用途には耐圧100V以下のパワーMOSFETを中心に供給しており、AC/DC、DC/DC電源の同期整流用スイッチやVRM(Voltage RegulatorModule)用スイッチ、電池パックの充放電用スイッチなどに使われている。電源用ICと同様に、パワーMOSFETでも継続的に損失を減らして省エネに貢献してきた。

パワーMOSFETの損失には大別するとオン損失、ドライブ損失、スイッチング損失の3種類の損失がある。オン損失はオン抵抗を下げることで、ドライブ損失はゲート容量を小さくすることで、またスイッチング損失はゲート-ドレイン間容量を少なくすることで、それぞれ低減化を図ってきた。その結果、ルネサスのパワーMOFETは、その性能を示すFOM(オン抵抗×ゲート容量)において業界トップレベルにある。

加えて、SiP技術を用いて小型のDrMOS( IntegratedDriver - MOSFET)「R2J20651NP」も製品化した。2個のMOSFETスイッチとドライバICを業界に先駆けて一体化することに成功している(コラム参照)。

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リチウムイオン電池を賢く管理 AFEとマイコンをSiPで1パッケージ化

一方、DCを出力するバッテリを入力とする電源では、電池セルを管理するICが必須になる。電池セルの出力電圧は常に変化しており、充放電電流が大きすぎると著しく劣化したり、時には発火の危険さえ伴うからだ。

電池セルを管理するICには、特にノートパソコンに搭載するリチウムイオン電池に関して「SBS(Smart Battery System)」と呼ぶ規格がある。SBSに準拠したICでは、電池パックに電子回路を組み込むことで、電池パックとノートパソコン本体がさまざまな情報をやり取りする。多様な保護機能も組み込むことで、電池の安全性を維持する。

 

SBSは通常、AFE(Analog Front End)部と制御用マイコン部により構成される。ルネサスでは、これらをSiP(System in Package)技術によって1つのパッケージに収めた「R2J24020Fグループ」を開発し、基板占有面積の削減と部品点数の削減に寄与している(コラム参照)。

またバッテリの充電回路についても、ルネサスはリチウムイオン電池パックの充電回路用にチャージャICを製品化してきた。2011年には新しい電気用品安全法(電安法)が施行される見通しがあり対応を進めている。

今後もルネサスは、変換効率の高い安定した電源を実現する製品づくりを一歩一歩進め、電力インフラやエレクトロニクス製品の省エネ化に貢献していく。

96.5%の電源効率と6mm×6mmの小型化を実現したDrMOS
R2J20651NP

ルネサスは、2個のMOSFETスイッチとドライバICを6mm×6mmの小さなパッケージに封止したDrMOSとして「R2J20651NP」を開発した。

DrMOSとは、Intel社が提唱したICの技術仕様であり、CPUコアやDDR(Double-Data-Rate)、メモリなどに供給する電源(VRMやDC/DCコンバータなど)に向けて策定された。

R2J20651NPは、DrMOSの最新仕様である第3版(Revision 3.0)に準拠している。ハイサイド用MOSFETとローサイド用MOSFETにはルネサスの最新パワーMOSである第10世代のパワーMOSFETを採用しており、例えばDDR用DC/DCコンバータ(入力5V、出力1.8V)を構成した場合に、最大で96.5%と高い効率を実現できる(図3)。

ルネサスは業界に先駆けてDrMOS準拠の第1世代品と第2世代品を開発してきた実績がある。今回の製品では第2世代品の高い放熱性を引き継ぐとともに、ドライバICに温度検出回路を内蔵することで安全性を高めた電源を構築可能にした。

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図3:上はR2J20651NPを使ったDDR用DC/DCコンバータの構成例。左はそのDC/DCコンバータで測定した電源効率データ。
高精度の電池残量検出を実現するリチウムイオン電池制御IC
R2J24020Fグループ

バッテリ監視用IC「R2J24020Fグループ」は、ノートパソコンのリチウムイオン電池パックに組み込むことを想定して開発された。SBSで定められた規格に則り、電池パックとノートパソコン本体が電池の種類や満充電容量、残容量、充放電回数などの情報をやり取りする。

R2J24020Fは、リチウムイオン電池セルの状態を計測して充放電用MOSFETを制御するAFE(Analog Front End)のバッテリ保護制御ICと、ノートパソコン本体とのデータ通信を担う16ビットマイコンの2チップを、ルネサスは独自開発のSiP技術によって1個のパッケージに収納した製品である(図4)。

従来製品の「R2J24010Fグループ」ではAFE用ICと8ビットマイコンをSiP化しており、数多くの採用実績を有する。今回開発したR2J24020Fでは、16ビットCPUコア「R8C」の採用によって処理を高速化することで命令の実行時間を短くし、省エネを実現した。また内蔵するA/Dコンバータの分解能を高めて残量表示の精度を高めるとともに、初期較正の手間を大幅に削減している。

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図4:R2J24020Fの内部ブロックと、R2J24020Fを使ってノートパソコン用リチウムイオン電池パックを構成した回路例。AFE用ICとマイコンを1個のパッケージ(LQFP)に収納している。パッケージの大きさは7mm×7mm。
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