システムでエコ
![]()
環境問題の解決のためには、さらなる「省エネ」を進める必要があります。そのためには、システムレベルでムダな電力を削減し、いかに効率のよい制御を行うかが重要なポイントになってきます。製品のキーパーツとして半導体デバイスが果たす役割は大きく、環境にやさしい製品づくりに貢献するためには、ハードウェアの工夫とともに、ソフトウェアの設計技術も重要な役割を果たします。
ここでは、応用システムにおけるエコテクノロジをご紹介致します。なお、具体的な応用については、 「アプリケーションでエコ」 のページもご覧下さい。
再生可能なエネルギーへの転換
地球温暖化問題の解決のために低炭素社会の実現が急務となっています。これまでの化石燃料を使った発電から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した発電への転換が求められています。また、同じように化石燃料を消費して走る自動車も、これからはプラグインハイブリッド車や電気自動車に移行すると考えられています。
しかし、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを利用した発電は、様々な自然条件によって発電量が左右されます。大規模な電力システムを安定的に運用するために、 IT (情報通信)技術を利用した新しい電力送配電網システムである「 スマートグリッド 」の構築も、各国で積極的に進められようとしています。
こうした再生可能エネルギーへの転換に向けては、エレクトロニクスの技術が必要不可欠となります。より少ない電力で動く機器の開発、より効率のよい電力変換など、半導体技術の果たす役割は極めて大きいと言えます。
システムの消費電力削減に向けた技術
システムの消費電力削減に向けた技術としては、無駄な消費電力を削減することが挙げられます。たとえば、「休んでいるように見えても意外と待機電力を消費していないか?」、「どこの電力消費部分の効率化をすることが、システム全体に最も効率的か?」、などの課題をクリアしていく必要があります。以下に、いくつかのシステム対策例を挙げます。
1)ムダな消費電力の削減
ITから家電まで、システムレベルで「省エネ」を実現 するには、まず「主電源」の制御や、「待機電力」の低減、また、その制御そのものの方式も、インバータ化の積極採用などより、低消費に有利な「システム技術」が必要で、以下にいくつかその例を紹介します。
(a)運転時以外の主電源オフ
- スケジュール運転:
- あらかじめ運転の計画を決めておき、必要なときだけメインの電源を入れる、あるいは、一定時間ごとの処理が必要な場合は、処理の時だけタイマで電源を入れて動作させます。工場のような大規模な施設では、特に有効な方法です。
- センサによる運転制御:
- 人感センサを用いて「人がいるときだけ運転する」といった制御を行い、不要な運転を止めます。
- ネットワークからの制御:
- ローカルエリアネットワーク(LAN)などを利用した制御を行い、必要な装置にだけ電源を入れるようにします。
(b)待機電力の削減
電源を切ることができない装置、たとえば時計機能だけは止められないような装置では、時計動作に必要な電力だけ供給し、それ以外の電源を切ります。待機電力の削減においては、デバイスそのものの消費電力も重要なポイントです。
- スリープ機能:
- マイコンやSoCには必須の機能です。必要最低限のブロックだけを残して、それ以外のブロックの動作を止めたり、極めて低いクロック周波数で動作させることによって、消費電力を極限まで削減することができます。また最近では、状況に応じていくつかの低消費電力モードを使い分けることも行われています。
- 電源の間欠動作モード:
- 一定時間ごとの処理が必要な場合、処理の時だけ電源を入れて動作させます。
- 待機用小電力コンバータ:
- 一般的に大容量のパワーデバイスは、電源効率の点でやや不利であるため、待機中の電力のみを供給する高効率の小容量電源を別に設ける方法です。
(c)動作時電力の削減
家庭などでもおなじみのエアコンや冷蔵庫などを例に見ても、動作時電力の削減には、システムレベルで省エネ設計を徹底する必要があります。中でも電気を動力に変換するモータの省エネが不可欠であり、これにはインバータ制御が最適です。インバータ方式とは、商用・交流電源を直流に一度変換してから、その直流電圧から交流電圧を作り出し、その出力でモータなどを駆動する方式です。たとえば、50Hzや60Hz、100V固定の商用電源直接駆動に対して、インバータ方式は自由に電圧振幅や周波数、駆動の位相を制御することなどに優れており、動作時電力の削減に効果の高いシステム技術です。
2)エネルギー変換効率を高め、きめ細かく制御する ~インバータ制御の詳細~
FA機器や家電製品では、温度、湿度、回転速度、流 量などを時間とともに管理しています。たとえばエアコンであれば、モータでコンプレッサを回し、ヒートポンプの原理で室内の温度を設定値になるよう制御します。室内温度は常にセンサを用いて測定していて、モータ、制御バルブなどを最適に制御することで、目標とする設定温度に近づけていきます。
もしこのとき、単純なオン/オフ制御しかできないと、設定温度から外れるたびにモータ(コンプレッサ)はフルパワーで回ることになり、エネルギーを効率的に使うことができません。設定温度に素早く到達させるとともに、その設定温度をきめ細かく維持・管理できるような、エネルギー変換の制御方法が必要になります。
こうした目的のために、現在ではインバータ制御が広く用いられるようになりました。インバータ制御は、電源の電圧と周波数を自由にコントロールできる技術で、電力の効率的な変換と、きめ細かな制御を実現することができます。
ルネサスは、インバータ制御に適した高機能PWMや多チャネルA/Dコンバータを内蔵したRX600シリーズをはじめとする各種 MCUや、IGBT、MOSFETなど高性能なパワーデバイスを豊富に取り揃え、このインバータ技術の普及に貢献しています。インバータ技術の概略については、次項をご覧下さい。

「インバータ」 ~民生・産業分野の省エネ基盤技術 ~

インバータを利用する家電製品の例

インバータの基本原理
家電製品に代表される民生分野から産業分野まで、インバータ技術を抜きにして省エネを語ることはできません。
パワーエレクトロニクスにおけるインバータとは、直流を交流に変換する電源回路、またはその回路を持つ電力変換装置のことです。インバータは、パワー半導体を用いたインバータ部、そのインバータ部を制御・保護する制御回路部(MCU)で構成されます。
インバータ技術を用いることで、直流から交流への変換や、電圧や周波数を自由にコントロールすることができるようになりました。このインバータ技術が登場する以前は、モータなどの駆動に商用電源をそのまま使うことも多く、細か な制御ができず、効率改善にも限界がありました。
インバータ技術の発達により、ブラシレスDCモータや、誘導モータの可変速運転が可能になり、鉄道・産業用機器から家電製品まで、あらゆる分野でインバータ制御が使われるようになりました。さらに高性能な半導体デバイスの登場で、その利用が促進され、機器の利便性を高めるとともに、省エネルギーにも大きく貢献しています。
ルネサスは、インバータ制御に適した高機能PWMや多チャネルA/Dコンバータを内蔵したMCUや、IGBT、MOSFETなど高性能なパワーデバイスを豊富に取り揃えています。
エコ製品の開発に役立つルネサスのインバータ技術を使用したアプリケーション例は、「 アプリケーションでエコ 」のページをご覧下さい。
電源装置の電力変換効率を高める技術
ルネサスはスマートグリッドにいち早く着目し、その実現に向けた様々なソリューションをご用意しています。スマートグリッドの基盤となる通信インフラに対しては、すでに近距離無線通信の「ZigBee」や、電力線通信「PLC」向けのデバイスを供給しています。
工場や各家庭には、交流で電力が供給されています。家電製品やパソコンなど、ほとんどの電気製品の内部では、この交流を電源回路で直流に変換して利用しています。こうした交流/直流の電力変換を行う電源装置は、その変換の際に必ずエネルギーのロスを伴います。
一方、IT化でパソコンやサーバの需要が伸びたり、発展途上国でも生活水準が向上して多数の電気製品を使うようになると、この電力変換に伴なうロスは無視できない大きさとなります。機器の動作に隠れた、この見えない電源装置のムダをいかに小さくするかが省エネの課題となっています。これを解決するために次のような手段が考えられます。
1)電源装置の電力変換効率を改善する「デジタル制御電源」
多くの機器で使われている電源装置の効率を改善することは、世界全体の電力変換効率の改善につながります。電源装置の効率改善には次のような手法があります。
- 低損失のパワーデバイスの採用 (低・オン抵抗トランジスタ、低損失リカバリダイオードなど)
- 高効率回路の適用 (改良マルチレベルインバータ、階調制御、各種高効率UPS方式など)
- ソフトスイッチングコンバータ(共振コンバータ、ゼロ電圧スイッチ) :パワーデバイスのスイッチングロスを低減する手法です。スイッチング周波数も高くすることができ、コイルを小さくできることから、電源の小型化にも効果があります。
しかし、こうした高性能な電源では、制御が複雑になるため、従来のアナログ制御方式に代わって、デジタル制御方式がいま注目されています。デジタル制御方式は、電源の制御システムをデジタル化することで、プロセッサやDSPによる演算処理を可能にし、ソフトウェアの変更で様々な制御の方式に柔軟に対応できるようになります。

2)デジタル制御電源化が進む UPS
大規模なITのデータセンタでは、UPS(無停電電源装置)を用いて停電対策を行った上で、サーバ等のIT機器に電源を供給しています。停電時にも瞬停のない オンラインUPS は信頼性に優れていますが、UPS内ではバッテリに電力を蓄えるため、常に交流→直流→交流の電力変換が行われています。
特に、高密度にIT機器が集積されたデータセンタでは、電力変換に伴うロスは大きな問題となっています。さらに、そのムダによって生じた熱への対策から、空調にも多額の投資が必要になります。
これらの省エネルギー化に対応するためには、データセンタに使われる大型のUPSはもとより小型UPSにおいても、電力変換効率を高める新しい各種の制御方式、制御回路が提案され開発されています。そのため、従来のアナログ制御方式では実現できそうもない複雑な制御方式も要求されるようになってきました。
これを解決するための手法がデジタル制御方式です。特にマイコンによるフレキシブルなデジタル制御技術をUPSに取り入れることが可能となってきました。主に制御アルゴリズムを動作させる浮動小数点演算器や、アナログ信号検出のためのA/Dコンバータを豊富に備え、高性能PWM駆動機能を有した RX600シリーズは、DSP信号処理をしながら、マイコンが得意とする割込み制御や通信機能を活用することができ、電力変換ロスの小さい高効率高性能な UPSが実現できます。

「電源」 ~ デジタル制御電源、PFC、フルデジタル制御UPS、バッテリ制御 ~
あらゆる電気・電子機器に必要なのが「電源」です。電源には、商用電源やバッテリに蓄えられた電力を、効率よく必要な形の電気に変換することが求められます。たとえわずかでも変換効率を高めることが、低消費電力化と省エネに直結します。
ルネサスでは、広く汎用的に利用される各種の DC/DCコンバータをはじめ、PWM・IC、力率改善のための臨界モードインターリーブ方式PFC ICや、高精度の電池残量検出を実現する電池制御ICをいち早く提供し、変換効率の向上に貢献してきました。またパワーMOSFETに関しても、SiP技術を使った6mm×6mmのDrMOSを提供するなど、いっそうの小型化と電源効率の向上に取り組んでいます。
また一方近年、デジタル制御電源やフルデジタル制御方式のUPSが注目を集めていますが、高効率かつソフトウェアによるフレキシブルな制御、通信機能による大規模な電源システムの統括制御など、電源のデジタル化には多くの可能性があります。
デジタル制御電源では、PWM回路を用いてスイッチングデバイスによるパワー制御を行い、高速なフィードバック演算をデジタル処理することで、高性能な電源を実現します。主に制御アルゴリズムを動作させる浮動小数点演算器や、アナログ信号検出のためのA/Dコンバータを豊富に備え、高性能PWM駆動機能を有した RX600シリーズ は、電力変換ロスの小さい高効率高性能なUPSが実現できます。近年デジタル制御電源が注目されるようになった背景には、これらのプロセッサやパワーデバイスなど半導体の大幅な性能向上があります。
Japan 日本語
